二宮尊德は「人々の心から変えていく」という方法で、貧しい農村を復興させた!

二宮尊德は「人々の心から変えていく」という方法で、貧しい農村を復興させた!

リーダーとして、人をまとめることは、とても大変な仕事ですね。

ルールを作って、みんなに守らせれば良いというほど簡単ではありません。また、大盤振る舞いをしたり、みんなの御機嫌さえ取れば、ちゃんと動いてくれるというわけでもないです。

組織にも様々な形態がありますし、リーダーのタイプにもいろいろとあるので、「これをやれば必ずうまくいく!」という方法はないのかもしれません。

でも、成功例を参考にして、そこから学ぶことはできます。地域や時代は違っても、人間の心に大きな違いはないからです。

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人々の心から変えていった二宮尊德のリーダーシップ

二宮金治郎の像(Ninomiya Kinjiro)

少し古い時代の話になりますが、江戸時代の後期に活躍した人物に、二宮尊德(二宮金治郎:1787~1856年)という人がいます。そうです。薪を背負って歩きながら読書をしている像の人です!

尊德は何をした人かというと、荒廃していた農村を改革した人です。領主からも見捨てられていたような貧しい村々を、次々に、豊かな農村へと生まれ変わらせたのです。

しかも、今までに誰も考えなかったような方法によって、見事に村々を復興させていきます。

それは制度や政策によるものではなく、「人々の心から変えていく」という、最も理想的な方法でした。

そんな尊德のリーダーシップを学べるエピソードを、一つご紹介したいと思います。リーダーシップといっても、難しい話ではありません。感動的な話なので、ぜひお読みください!

人の三倍も働ける男

ある日、二宮尊德のもとに、「人の三倍も働ける!」という評判の男が紹介されます。でも、どうしたことか、尊德はそんな話を聞かされても関心を示しませんでした。

しかし、尊德の同僚から、「その男に、ぜひ褒美をやってほしい」としつこく頼まれて、尊德も渋々、その評判の男に会うことになります。

そこで尊德は、その男を呼んで、人の三倍は働くことができるという仕事ぶりを、実際に見ている目の前でやるように求めました。

するとその男は、それは無理であることを白状しました。男は、役人が見ている時だけ、無理して人の三倍の仕事をしているだけだったのです。

尊德自身が良き労働者であったため、尊德は一人の人間ができる労働の限界を知っていました。なので尊德は初めから、男が誤魔化していることを見抜いていたのです。

人を騙してまで評判を得ようとしていた男は、褒美どころか、尊德から厳しい仕置きを受ける羽目になりました。

切り株掘りの老人

その一方で、労働者の中に一人の老人がいました。年を取っているので、みんなと同じ仕事はできません。

なので老人は毎日、荒れ地の切り株を掘り起こすという地味で、とても骨の折れる仕事をしていました。

みんなが休憩しておしゃべりを楽しんでいる時にも、老人は一人、みんなが嫌がる仕事を率先してやっていたのです。

しかし、仲間たちからは「切り株掘り」と呼ばれて、たいして関心も持たれませんでした。老人で大した仕事もできないのだから、切り株でも掘り起こしていろ、というような扱いだったのでしょう。

でも、老人は自分にできる仕事に満足し、せっせと地味な仕事を続けていたのです。

二宮尊德から、最も高い評価を受けた者

労働者たちに賃金が支払われる給料日がやって来ました。尊德は、給料日には一人ひとりに賃金を手渡して、その仕事に対する評価まで、ちゃんと言い渡していました。

誰だって少しでも高い賃金が欲しいですし、一番偉いリーダーである尊德から褒められたいと思っています。

よく働いていると自負している者たちは、「今日こそ、自分が一番高く評価されるに違いない!」と、心待ちにしていたことでしょう。

ところがその日、尊德から最も高い評価と、十五両(※)という信じられないほどの高額な賃金を与えられたのは、仲間から「切り株掘り」と蔑まれていた老人だったのです!

(※単純に現在のお金と比較はできませんが、「一両=10万円程度」という試算目安があります。これで計算すると、15両は150万円ほどになります。やっぱり大金ですね!)

誠実さに対する、天からの贈り物

これには、みんなも驚きました。そして一番驚いたのは、当の本人でした。

「ご主人様。私は年を取っており、仕事も遅くて、一人分の賃金を頂く価値もありません。これは何かのお間違えではありませんか? こんな大金を頂くなんて、とんでもないことです」

老人は信じられずに、そのように尊德に言いました。しかし、尊德は次のように答えます。

「あなたは他の者がやりたがらない骨の折れる仕事をしたのです。人の評判も気にしないで、ひたすら村のために貢献しました。そのおかげで、私たちはとても仕事がやりやすくなったのです。

あなたのような人に褒美を与えずにして、どうやってこれから先、この辛い仕事が続けられるでしょうか?

これはあなたの誠実さに対する、天からの贈り物なのです。あなたのような誠実な人間に出会えて、私は本当に嬉しいです」

老人は尊德の言葉を聞いて心を打たれ、涙で袖がびしょびしょになるほど、子どものように泣きじゃくったということです。

人々の心から変えていく二宮尊德の真骨頂

尊德は、誠実に働けば必ず報われるということを、みんなの見ている目の前で示したのです。

これでやる気の出ない人間はいませんね。どんな仕事であっても、今まで以上に、人々が仕事に精を出すようになったのは言うまでもありません。

これが尊德の「人々の心から変えていく方法」の真骨頂なのです。

尊德の偉いところは、上から指図をしているだけではなく、ちゃんと自分も一人の労働者として現場に出て行き、働いている人たちの一人ひとりの働き具合まで、自分の目で見て確かめていたのです。

リーダーの仕事は、みんなの誠実さを奮い起こすこと

もしもあなたが、尊德の立場になって、「貧しい村を復興せよ」と言われたら何から始めるでしょうか? 政治家になったつもりで考えてみてください。

補助金を与えても人々は豊かにはなれない

村を復興する方法の一つとして、貧しい者に補助金を与え、生活を支えてあげる方法もあると思います。

実は、尊德の以前にも、そのような施策はされていたのですが、結局はうまくいきませんでした

なぜならば、補助金は人々から労働意欲を奪い、自立心を失わせてしまうからです。一時的な助けにはなっても、人の心まで豊かにすることはできないのです。

今の政治家たちは票を取るために、補助金を与えるバラマキ政策ばかりをしています。でも、尊德は、むしろ補助金などは与えるべきではないと考えていました(※注)。

お金や権力だけで、人々を導くことはできない

尊德は、「お金や権力だけで、人々を導くことはできない」と語っています。その逆に、「人々の誠実さを奮い起こすことができれば、何でも可能なのだ」と言っています。

尊德に言わせれば、リーダーの最も重要な仕事は、「みんなの誠実さを奮い起こす」ということに尽きます。一人一人が、自らの意思によって、自分の役割を果たしてくれるようになるからです。

だからと言って、頭ごなしに「誠実に働け!」と言っても反発されるのは言うまでもありません。

尊德は、みんなが見ている目の前で、誠実に働く老人を、最も高く評価しました。

このことによって、「誠実に働く」という意味と、誠実な者が報われるという結果を、その場にいる全員が一瞬で理解したのです。

手本を示すのに、これほど良い方法はありませんね。

「誰も言うことを聞いてくれない。私はリーダーに向いていない」と悩んだ時には、二宮尊德のことを思い返してみてください。

人々の誠実さを奮い起こすことができれば、何でも可能なのだ」という尊德の言葉が、ヒントになるのではないでしょうか?

※注:誤解のないように付記しておきますが、二宮尊德は「補助金」には反対していましたが、人々に援助をしなかったわけではありません。
飢饉の際には、拒む役人たちを説き伏せ、城の穀物倉を開けさせて、領民の食糧難を救っています。
尊德が恐れていたのは、補助金を与え続けることで、人々の自立心や勤労意欲が失われてしまうことだったのです。

にゃんだふるな「まとめ」

見方によっては、「結局はお金で釣ったんだろう?」と思う人もいるかもしれません。でも、お金だけでは、人に感動を与えられないのです。

老人が子どものように泣きじゃくったのは、大金をもらった嬉しさだけではありませんね? その後、人々が仕事に精を出すようになったのも、お金目当だけではありません。

誠実に仕事に打ち込めば、必ず評価してくれる二宮尊德の人柄に惚れ、そして、誠実に働くことの喜びを知ったからなのです。